第3回スポーツリハビリテーションワークショップ

日時: 平成22年6月26日(土)16:00~21:00
場所: 東京医科歯科大学5号館4F講堂

テーマ:「膝スポーツ外傷・障害」

PDFを読む   掲載されている雑誌を見る

座長  東京医科歯科大学大学院運動器外科学分野 宗田 大 先生  
講師  中部学院大学リハビリテーション学部      林 典雄 先生

 

座長  東京医科歯科大学大学院軟骨再生学分野  関矢一郎 先生
講師  慶応義塾大学病院スポーツ医学総合センター 松本秀男 先生

 

座長 日本大学整形外科                  洞口 敬 先生
講師 文京学院大学保健医療技術学部          福井 勉 先生

東京スポーツ整形外科研修会第3回スポーツリハビリテーションワークショップが、6月26日、東京医科歯科大学を会場に開催された。今回は、「膝スポーツ外傷・障害」をテーマに医師・理学療法士など261名が参加した。    講演1では、林典雄先生(中部学院大学リハビリテーション学部)が、膝関節疾患の動態を超音波エコーを用いて解説された。スポーツ選手に多くみられる膝前面痛(Anterior Knee Pain)について、膝蓋下脂肪体の動きを考慮する必要があると述べられた。膝蓋下脂肪体は、膝屈曲にて、膝蓋骨の裏と大腿骨の隙間に入っていき、伸展にて膝蓋腱下に移動していく。超音波エコーによって映像化されたその動態は、まるで水が滑らかに動いている様であった。一方、障害例は、膝蓋下脂肪体の滑らかな動きがみられず、膝関節の正常な関節運動が破綻し膝前面痛の原因に関与している事が理解できた。超音波エコーによって、病態が目で見えることで何を治療すべきか明確になり、それに対し的確に治療するという、筋の通った講演は、説得力があった。  

 講演2では、松本秀男先生(慶應義塾大学病院スポーツ医学総合センター)が、スポーツ選手の診療においては、迅速かつ的確に診断し、治療方針を立て、スポーツ現場に早期に戻す事が重要であると述べられた。突然打ち合わせなしで、参加者のひとりを舞台へ上がらせ、実技をチェックされた。「テストがきちんと出来ているか」ではなく、靱帯の走行方向に合わせてストレスをかける事で靱帯のどの線維が損傷しているかが明確に分かる。「マニュアルに沿っておこなっているだけでダメ」で、「テストする部位の解剖を理解していることが大切」であることを改めて感じさせられた。

 

 講演3では、福井勉先生(文京学院大学保健医療技術学部)が、膝のバイオメカニクスを分かりやすく解説された。膝関節より上の質量重心が、膝関節よりも後方にあれば、膝関節は屈曲の負荷を受け、姿勢を保持するために膝伸展筋が収縮する。重心が後方に位置した姿勢でスクワットを行えば、大腿四頭筋が過剰に収縮する。Anterior Knee Painを生じる多くは、重心が後方に位置している。例えば、オスグッドシュラッター病では、大腿四頭筋のストレッチが有効と思われているが、大腿四頭筋が過剰に収縮しないように重心をコントロールすることで治療・予防できることを述べられた。最後に、「筋力強化という武器しか持っていない人は、筋力の弱いところを探そうとする」と述べられ、治療家の視点が患者さんを左右してしまうため、いろいろな視点を身につけるべきというメッセージと感じた。

 このワークショップは毎回、スポーツリハビリテーション最前線の講師が、聞く講習会でなく、実戦力になる講義実技をされており、次回も参加したいと感じた。(河合眞哉:NPO法人メディカルリハビリテーション