第1回スポーツリハビリテーションワークショップ

日時: 平成21年8月29日(土)17:30~20:30
場所: 東京医科歯科大学16F大会議室

テーマ: 「膝前十字靭帯損傷

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■講 義  17:40~18:40
座長 東京医科歯科大学 大学院軟骨再生学分野    関矢一郎 先生
「膝ACL損傷の評価と再建術」
東京医科歯科大学 大学院運動器外科学分野      宗田 大 先生

■ワークショップ  18:50~20:20
座長 国際武道大学体育学部/大学院武道・スポーツ研究科 荻内隆司 先生 
「膝前十字靭帯再建術後リハビリテーションの実際」
昭和大学 保健医療学部理学療法学科            加賀谷善教 先生
関東労災病院 リハビリテーション科             今屋 健 先生
東京医科歯科大学 大学院運動器外科学分野       八木茂典 先生

  

 去る8月29日(土)、東京スポーツ整形外科研修会スポーツリハビリテーションワークショップが、東京医科歯科大学(東京都文京区湯島)において開催された。医師・理学療法士・トレーナーなど、他職種の方が参加した。

 まず宗田大氏(東京医科歯科大学)による「膝ACL損傷の診断と治療」の講義より始まった。診断時のポイントや、術式(移植腱や骨孔位置、固定法)の違いによる利点・欠点、手術時のコツなどについて解説された。選手の復帰のために術式を改良してきたご自身の経験を交えたお話に、医師のみならず、リハビリテーションに関わる者も大いに考えさせられた。

 続いて「膝ACL再建術後のリハビリテーションの実際」と題したワークショップがおこなわれた。座長の荻内隆司氏(国際武道大学)が導入として、1990年にShelbourneが提唱したAccelerated Rehabilitationにより膝ACL再建術後のリハビリテーションは大きく進歩したが、その後20年経過し課題も残ったことを述べた。その後、今屋健氏(関東労災病院)、八木茂典氏(東京医科歯科大学)、加賀谷善教氏(昭和大学保健医療学部)らが、その課題について答えていく形で進められた。

 今屋氏は、術後2週間までのリハビリテーションについて述べた。膝伸展可動域が不足すると、膝伸展筋力不足がもたらさるため、術後早期からの膝伸展可動域獲得の重要であると述べた。可動域という視点だけでなく関節の遊びについても評価することが大切であり、健側が過伸展する選手を例に上げ、術後関節の遊びが小さいと伸展制限がおこりやすく、遊びが健側程度であれば積極的に可動域エクササイズをしなくても改善して行くと、個体差を踏まえる重要性を提言した。

 八木氏は、術後2週~3ヶ月のリハビリテーションについて述べた。考慮すべき点として、術式によりリハビリメニューは異なり、禁忌となるエクササイズも異なると提言した。筋力強化エクササイズとして、レッグエクステンションやSLRなどは、移植腱への負担がかかってしまう。移植腱に半腱様筋腱を用いた場合は、レッグカールやノルディックハムストリングスエクササイズなどは、実施を慎重に検討すべきであると述べた。そこで、半腱様筋に負担のかからない半膜様筋のエクササイズのエクササイズを紹介した。

 加賀谷氏は、競技復帰前のアスレティックリハビリテーションについて述べた。片脚スクワット・片脚ジャンプ着地において簡便な膝外反の評価方法を紹介した。膝外反の要因となる股関節機能・足部機能などの他の評価との併用すると有用であると述べた。パフォーマンスがなかなかあがらない要因の一つに関節固有感覚の問題をあげ、イスからの立ち上がり時に観察される、Lombard’s Paradox現象にてハムストリングス収縮のタイミングを評価することができると提言した。リハビリテーションでのポイントとして、膝外反をおこす要因、神経‐筋協調性、プレー中に膝外反をおこさない動作と段階的にプログラミングする必要があると述べた。(真弓正吾・東京衛生学園専門学校)