第2回スポーツリハビリテーションワークショップ

日時: 平成22年1月16日(土)16:00~20:30
場所: 東京医科歯科大学5号館4F講堂

テーマ:「投球障害肩」

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講演 16:15~18:15

座長  横浜南共済病院スポーツ整形外科 山崎哲也 先生
「投球障害肩~医師の診かた~」
同愛記念病院整形外科 中川照彦 先生

「投球障害肩~理学療法士の診かた~」
東京医科歯科大学大学院運動器外科学分野 八木茂典 先生

ワークショップ 18:25~20:25

座長 船橋整形外科病院スポーツ医学センター 菅谷啓之 先生
「投球障害肩の診かた治しかた」
(有)フィジストレーナー 山口光國 先生

 

 2010年1月16日(土)、東京スポーツ整形外科研修会第2回スポーツリハビリテーションワークショップが、東京医科歯科大学講堂にて開催された。定員100名に対し、約3倍の応募があり注目を集めた研修会となった。参加者は、医師、プロ・実業団野球トレーナー、野球指導者、理学療法士、柔道整復師、鍼灸・あんまマッサージ師、アスレティックトレーナー、ピラティスマスターなど多種多様であった。今回は「投球障害肩」をテーマに、中川照彦氏(同愛記念病院:日本ハムファイターズチームドクター)、八木茂典氏(東京医科歯科大学:理学療法士)、山口光國氏((有)フィジストレーナー:元横浜ベイスターズフィジカルコーチ)がそれぞれの立場から発表された。  

 まず、中川氏が「医師の診かた」について述べた。解剖の説明から、腱板断裂、インピンジメント症候群などについて述べ、手術等の映像を用いて参加者にリアルに肩の病態をイメージさせた。更に実際に行っている診察のデモを披露された。病院やクリニック等でもなかなか医師の診察を“生”で見る機会は少なく、大変貴重なデモであった。  

 次に八木氏が「理学療法士の診かた」について述べた。関節窩に対する骨頭の位置関係において、肩の挙上路には肩を内旋させるようにして挙げる前方路、外旋させるようにして挙げる後外側路があり、早期コッキング期では前方路を上手く使えるかがポイントであることを説明した。インナーマッスルの最新解剖について、棘上筋は従来は外転の補佐とされていたが肩屈曲・内旋筋である、棘下筋は外旋というより肩外転・外旋筋であることを説明した。解剖学知見をベースとした評価・治療のデモは会場の注目を集めた。

 最後に山口光國氏が「投球障害肩の診かた治しかた」について述べた。選手に対する接し方、外的環境や内的環境が身体にどのような影響を及ぼすのか、について述べられた。自身のプロ野球での経験から、ちょっとした選手の変化に気づくことの大切さや、選手に対する声のかけ方について説明した。外的環境については、グランドの傾斜や硬い・柔らかいグランド、夏と冬では身体への負担が違うため、コンディションニングの仕方が異なると述べた。内的環境については、肩関節と全身との関係についてデモを通じて説明した。ある被験者は腰を、ある被験者は手関節に対し施術すると肩の可動域が変化することを披露した。肩の動きを阻害している因子を発見し除外することそれ自体が治療につながることを説明された。

 今回は「投球障害肩」をテーマに、職種の異なる人々が、連携をとって一つのことに取り組もうとするこの研修会のような取り組みは、理想的であると感じた。デモを通じて“生”を見ることが出来るのも非常に有意義で、今後も注目の研修会の一つになると思う。 (畠山智行 北小岩整形外科・石川ミリオンスターズ)